テレワークにおいては、オフィスとは異なる作業環境が原因で起こる肩こりや腰痛の問題が起こりやすくなっています。今回は、テレワークの健康管理として、テレワークの肩こり・腰痛対策と、労災の認定基準について解説していきます。
- テレワークにおける肩こり・腰痛の予防
- 腱鞘炎・腰痛の労災認定
「テレワークの導入」、「テレワーク環境の整備」についてもブログで解説しています。
テレワークでの肩こり・腰痛予防
テレワーク用デスクと椅子の選定
パソコンの操作を行う際、事務用のデスクと椅子であれば、通常作業に負担のない高さに設定されています。
しかし、自宅で作業などを行う際には、リビングのダイニングテーブルと椅子などで作業することも多く、適切な高さになっていない場合には、肩こりや腰痛の原因となることがあります。
本人の身長などにもよりますが、厚生労働省が示している「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」によると、
- 机の高さは60cm~72cm程度の範囲で調整できることが望ましい
- 女性が使用する場合に必要な机の高さの平均値は約65cm
- 男性が使用する場合に必要な机の高さの平均値は約70cm
とされています。
また、その他にも
- ディスプレイのとの視距離は40cm以上確保
- 上腕と前腕の角度は90度以上でキーボードに自然に手が届くようにする
- 椅子の高さは、床から座面への高さが37cm~43cm程度の範囲で調整できることが望ましい
とされています。
常態としてテレワーク勤務を行う場合には、デスクや椅子の高さなどを確認し、必要があれば新たに購入するなど、適切な作業環境を整えるようにしましょう。
作業休止時間
適切なデスクや椅子を整えたとしても、長時間パソコンに向かって入力作業などを続けると、目の疲れや肩こり、腰痛の原因となります。
ガイドラインでは、情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないよう注意し、一時間ごとの休止時間や、合間の小休止をとるように指導しています。
適切な小休止を挟む事は、作業の生産性向上にも役立ちます。ときには立ち上がり、ストレッチをするなども、肩こり腰痛対策には重要です。
腱鞘炎・腰痛の労災認定
腰痛や腱鞘炎については、厚生労働省が労災の認定基準を公表しています。その内容をかいつまんで説明すると次のようになります。
腰痛の労災認定
腰痛の労災については、次の2つが認められます。
- 災害性の原因による腰痛(次の2つの要件を満たすもの)
- 腰の負傷またはその不詳の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
- 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
- 災害性の原因によらない腰痛
- 突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるもの
つまり、突発的な出来事が原因で発生したぎっくり腰のような場合や、比較的長期間重量物を取り扱ったり、腰に大きな負担がかかる作業を行ったような場合には、労災と認められる可能性があることになります。
テレワークも含めて、いわゆるデスクワークが原因の腰痛の場合、腰に過度の負担がかかる業務とまでは言えず、小休止を挟むことも可能であるため、一般的には労災として認められることは稀でしょう。
腱鞘炎等の労災認定
腱鞘炎など、上肢障害の労災認定については、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること
- 発症前に過度な業務に就労したこと
- 過度な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること
デスクワークの場合について見てみると、パソコンなどキーボードで入力する作業については、「上肢等に負担のかかる作業」として認められます。
また、「相当期間従事した」とは、原則として6ヶ月以上従事した場合をいいます。
その上で、特殊な事情や、業務の繁忙などで、通常より一定程度以上業務量が多い日が3ヶ月程度続いた場合「過重な業務に就労した」にあたる可能性があります。
つまり、主としてパソコンで入力する作業に6ヶ月以上従事し、通常よりも一定以上業務量が多い月が3ヶ月以上続いた事が原因で腱鞘炎等になった場合には、労災として認められる可能性があることになります。
結論としては、テレワークでのデスクワークを原因とする場合、一般的に腰痛の場合には労災と認定される可能性は低く、腱鞘炎等の場合には業務量の増大などがあれば、労災に認められる可能性があるということになります。
実際には、ケースバイケースになりますので、実際にこうした事が起きた場合には、社労士や労基署にご相談ください。